「いつもはカットとカラーだけど、今日はパーマもかけたいな~。」
と思って、いつもの美容室に行ってみたら「カラーリングとパーマを一緒にすると傷みが大きくなるのでお勧めしませんよ。」などと言われてしまいました。
それで仕方なく断念したことありませんか?
この記事を目に止めてくださった皆さんなら、少なからず経験があることと思います。
では、どうしてパーマとカラーは一緒にできないのか?
答えは、ダメージと仕上がりです。
ダメージは良く言われていることですが、「なぜ一緒にするとダメージが大きくなるのか?」ということまではあまり知られていません。
仕上がりについては、「仕上がりの精度が落ちる」と、言った方が正しいかもしれませんね。
その理由をくわしく見ていきたいと思います。
なぜ、パーマとカラーを一緒にするとダメージが大きくなるのか?
「どうせ両方やるなら、ダメージなんて一緒じゃん。」
「トリートメントもやれば傷まないでしょ!?」
「1~2週間空けたって、意味ないんじゃない?」
そう思われるのが普通だと思います。
pH(水素イオン指数)の変化
一つの理由としては、pH(ピーエッチ、ピーエイチ、ペーハー)の変化が短時間のうちに行われてしまうからです。
いきなり、「水素イオン指数」なんていわれても分かりにくいとおもいますが、簡単には「酸性」「中性」「アルカリ性」のことです。
pHはおおよそ 0~14 の範囲になります。
- 0~6 ・・・ 酸性
- 7 ・・・ 中性
- 8~14・・・ アルカリ性
もっと、細かく分けることもできますが、ここでは簡単な説明をするのになんとなく分かってもらえていれば大丈夫です。
分かりやすく、実際の施術内容から考えてみましょう。
時間がなくてカットとカラーとパーマを一緒にした場合
カラーは今よりも少しだけ落ち着かせたアッシュ系、パーマは肩下ぐらいのミディアムヘアに柔らかめの質感のものをオーダーしたとします。
スタイリストにもよると思いますが、基本的にはパーマを先にかけます。
ここで、「なぜ?」という声も聞こえてきそうですが、その理由も最後に説明します。
カットをする
カットは薬剤を使うわけではないので、pH の変化はありません。
ただし、シャンプーをしてからカットする場合、そのシャンプー剤やコンディショナー、トリートメントにも pH はあります。
パーマ液やカラー剤のジャマをするほどのことはありませんが、気をつけるに越したことはありません。
基本的には、パーマやカラーの前にはコンディショナーやトリートメントをすることはありませんが、ダメージが強いと髪が引っかかってカットできないこともあるので、そんな時は使わざるをえないからです。
パーマをかける
髪にロッドを巻いていきます。
ここでは通常のコールドパーマをかけていったとしましょう。
(エアウェーブやデジタルパーマではなく。)
ロッドをまき終えたら、パーマの1液を塗布していきます。
この1液は通常、アルカリ性です。(酸性のものもあります。酸性パーマなど。)
アルカリにはたんぱく質を変性させたり、単純に柔らかくする効果があります。(システィン結合などを切っている。)
1液で適切な時間をおいた後、お湯で流して表面の1液を流します。
この時点では浸透した1液の効果は続いていて、まだアルカリ性の状態になっているんです。
最後に2液を塗布することで髪を弱酸性に戻して、パーマの形を固定していくのです。
厳密には、アルカリが完全に消えたわけではありません。
カラーをする
パーマの2液を使用してキチンと処理ができていれば、少なくとも表面近くまでは中和されているはずです。
髪の毛はこの時点では弱酸性になっています。
おそらく根本の部分は伸びているでしょうから、明るくするためのカラー剤(アッシュ系)を塗布していきます。(明度アップ)
毛先の部分は退色して色味は抜けてしまい、明るくなっているでしょうからアッシュをベースとしたカラー剤を塗布して明るさを抑えていきます。(明度ダウン)
このとき、カラー剤にはアルカリ性の「1剤」と酸性の「2剤」を混ぜて使用します。
この2つが化学反応を起こして髪を染めていくのです。
完全に中和されてくれればよいのですが、残念なことに1剤のアルカリだけが髪に残ってしまいます。
このとき、このアルカリを完全に除去することはできません。
そう、時間が必要になってくるのです。
カラーリング用のアルカリ除去作用をもったシャンプーやトリートメントを使っても、1~2週間は掛かります。
アルカリ除去剤もありますが、やらないよりはマシといった程度です。
髪に浸透したアルカリは、1~2週間かけて、ぬるま湯で流したり、時間をかけて空気酸化(空気中の酸素に触れさせる)をしないと、完全には消えません。
まして、カラーリング用のシャンプーやトリートメントやアルカリ除去をしない場合は、なおさらダメージが大きくなってしまいます。
つまり、カラーが終わった時点では、髪はアルカリ性になっているのですね。
pH(水素イオン指数)が短時間の内にこんなに変化している
カット前のシャンプー(アルカリ性)⇒ コンディショナー or トリートメント(酸性)⇒ パーマの1液(アルカリ性)⇒ パーマの2液(酸性)⇒ カラー(アルカリ性)⇒ トリートメント and アルカリ除去(酸性) ⇒ 仕上がり(うまくいっていれば弱酸性)
もし一日のうちにパーマとカラーをしたら、何度も髪の毛のpHが入れ替わり、キューティクルや内部のたんぱく質が変性しやすくなってしまいます。
キューティクルは二度も大きくアルカリ性に傾くことによって、損傷します。
内部も同様です。
髪の毛はパーマをかけ終わった時点でも、完全にアルカリが除去されているワケではありません。
いくら2液をつけたからといっても、非常に不安定な状態にあります。(ドライヤーで乾かさずにカラーすれば、なおさら空気酸化もできないのです。)
そこへ、アルカリ性であるカラー剤がつくと、簡単に髪の毛はアルカリ性に戻ってしまい、通常の状態でカラーをするときよりもダメージが出やすくなってしまうのです。
こうなってしまうとカラー後に弱酸性に戻すことは困難でしょう。
髪の毛を安定した状態にするのには、より時間がかかってしまいます。
短時間の間にpHの移動が何度も起こると、髪はダメージを受けやすくなるのですね。
仕上がりの精度が低くなる
パーマとカラーを一緒にかけると、仕上がりにも影響が出てきます。
ダメージが出やすくなってしまうので、当然と言えば当然です。
でも、それ以上にパーマもカラーも思った通りの仕上がりになりにくくなってしまいます。
パーマ ⇒ カラー の順番で施術した場合
パーマから施術すると、あとから施術したカラーでパーマが弱くなってしまいます。
パーマの2液でせっかく酸性にしたのに、カラーのせいでアルカリ性に戻ってしまうんですね。
美容師もそのことを計算して、少し強めにパーマをかけたりします。
でも、誤差が出やすくなってしまうんですね。
大きな失敗になるということはありませんが、ゆるめのパーマを希望していた場合、落ちやすくなります。
カラー ⇒ パーマ の順番で施術した場合
あまりこの順番でかけることはありません。
でも例えば、黒髪から明るくして色味をあまりこだわらない場合などには、カラーからする場合もあります。(髪の状態にもよりますが・・・。)
この場合、カラーは明るくなりやすく、色味も抜けてしまいます。
また、パーマの1液が強いものをつかったりすると、髪が変色して黄色味が出やすくなります。
当然、色持ちも悪くなります。
どちらから施術してもデメリットしかない
パーマでもカラーでも、先に施術したほうのクオリティが低くなります。
どちらから施術したとしても、髪の内部に残留した薬剤の成分が、余計な化学反応を起こしてしまうのです。
簡単な例しかあげませんでしたが、デメリットが多いことは明白です。
もちろん、髪の状態や希望の色や髪型によっても変わってきます。
ただ、どんな状況だとしてもパーマとカラーを一緒にすることのメリットは「一度に終わる」ことでしかありません。
どうしても時間がないときはしかたないとは思いますが、そのときは美容師と入念に相談することをおすすめします。